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 日本組織細胞化学会理事長  菱川 善隆2023年1月1日付で、日本組織細胞化学会の第14代理事長に就任しました宮崎大学医学部解剖学講座組織細胞化学分野の菱川善隆です。これから3年間、本学会ならびに日本の組織細胞化学の発展のために全力を尽くしたいと考えております。

 

 日本組織細胞化学会は、1960年に発足した「日本組織化学会」と「組織化学会」を基に、1968年に「日本組織細胞化学会」として設立され、今年で63年を迎えます。会員は、解剖学、生理学、生化学、病理学をはじめとする基礎医学のみならず、内科、外科、産婦人科、皮膚科など臨床医学や歯科学、薬理学、獣医学など様々な生命科学分野の研究者が集う学際的な集団です。私たちは、細胞・組織の形態学を基盤として、核酸、転写因子、タンパク質発現解析、細胞膜、ミトコンドリアをはじめとする細胞内小器官の機能解析など、多様な生命現象の本質を探究しています。

 

 生命科学分野の発展はめざましいものがありますが、「生命現象の本質」に迫るためには、細胞や組織の「形態」の示す情報と共に、その場での様々な物質の局在について時間軸を含めて統合し、その発現動態を視覚化することが必要です。このため、DNAやRNAなど遺伝子局在証明のための in situ ハイブリダイゼーション法、タンパク質発現解析として免疫組織化学やレクチン組織化学、定量解析のためのイムノブロット法やPCR法などの方法論を用いて、光学顕微鏡、電子顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、超解像顕微鏡、蛍光分子イメージング、質量分析などの最新技術を駆使して、ナノレベルから組織・個体レベルまで幅広い領域を対象として研究を進めています。

 

 また、組織細胞化学のエキスパート集団として、これらの方法論について、会員のみならず、そのスキルを必要とされている学生・技術者・研究者の皆様を対象にして、組織細胞化学講習会を毎年開催しています。具体的には、細胞・組織の固定法や光学顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡の操作法などの基本的手技から、抗原性賦活化や透明化技術、免疫電顕、遺伝子導入法、イメージング質量分析法、AIを用いた病理解析法など、最新の技術を含めた技術講習を行い、分子組織細胞化学的方法論の普及・啓蒙活動にも力を入れています。さらに学会英文機関誌としてActa Histochemica et Cytochemica (AHC)を1968年より発行しており、2022年で55巻を数えています。2006年からはオンラインジャーナルとして、また2019年にはAHCの新Webサイトを公開すると共に、2020年から国際標準のオンライン投稿査読システムEditorial Managerの運用を開始し、PubMedやJ-Stageを通じて、最新の研究成果をより迅速に積極的に世界に向けて情報発信しています。

 

 日本の組織細胞化学は、1939年にアルカリフォスファターゼの酵素組織化学的検出法を世界に先駆けて開発された本学会初代理事長の高松英雄先生や、1966年に酵素抗体法を開発し免疫組織化学の発展に大いに寄与された第6代理事長の中根一穂(Paul K. Nakane)先生をはじめとする数多くの偉大な先達の知的財産を学問的礎として発展してきました。

 

 今後とも、この素晴らしい伝統を受け継ぎ、世界の第一線でご活躍されている会員の皆様の研究の発展に少しでも寄与できるよう、学会運営に尽力していく所存です。

 

 皆様の一層のご支援とご協力の程、宜しくお願い申し上げます。

 

 

日本組織細胞化学会理事長  菱川 善隆